夏が近づくと頻繁に話題に上がる「熱帯低気圧」、これは一体どういう現象なのでしょうか。
天気予報で同時に名前を聞くこともある「温帯低気圧」とは異なる特徴を持ちますし、恐れられる「台風」とも一線を画す存在です。
今回は、これらの気象現象の違いについて詳しくご説明します。
熱帯低気圧とは？
そもそも熱帯低気圧とは、どのような現象なのでしょうか。
この自然現象について、具体的な特徴を詳しく見ていきましょう。
熱帯低気圧とは
熱帯低気圧は、温暖な海洋上の特定の条件下で誕生する気象現象です。
これらの条件とは、熱帯地方での海水温度が26度以上となる場所に限られます。
ここでいう「熱帯地方」とは、年中温暖な気候を持つ、緯度の低い地域を指します。
しかし、赤道直下の地域（北緯5度以内）では、この熱帯低気圧の成立条件が整いにくいため、多くは北緯5度から北緯25度のエリアで発生する傾向にあります。
特に、日本の南海域からフィリピンの東海域にかけてや、ベトナムの東部海域は、この種の低気圧が発生しやすい地点として知られています。
熱帯低気圧の特異性
熱帯低気圧は、その形成においてユニークな特性を持っています。
通常の低気圧と異なり、熱帯低気圧は前線を持たず、気象図上では完璧な円形を描く低気圧として現れます。
こういった特色は、その生成が海上に限定され、陸上では形成されないという点にも関連しています。
熱帯低気圧と温帯低気圧の違いは？
熱帯低気圧と温帯低気圧、この二つの気象現象はどのように異なるのでしょうか？
気象における詳細について、それぞれの特徴を明らかにしてみましょう。
そもそもの発生エリアが異なります。
温帯低気圧は名前の通り、中緯度に位置する温帯地域でみられる気象現象です。
一方の熱帯低気圧は、主に赤道付近の熱帯地域で発生します。
日本において台風が熱帯から温帯低気圧へと変わる過程は、この現象をよく示しています。
また、前線という気象用語を聞いたことがあるかもしれませんが、実際にこれが熱帯低気圧と温帯低気圧を区別する大きな要素です。
温帯低気圧は、様々な気温帯の空気が衝突することで形成される温暖前線や寒冷前線といった前線を伴います。
対照的に熱帯低気圧は、単一の暖かい熱帯の空気によって形成され、前線を持たない特徴があります。
更に、温帯低気圧内部では、冷たい空気と暖かい空気が混じり合っている状態が一般的です。
これは熱帯低気圧が主に暖かい空気だけで構成されていることとは対照的な特色といえるでしょう。
こういった気温の違いが、両者の気圧配置や風の動き、降水のパターンにも影響を及ぼしています。
気象を観測する上で、これらの差異は予報の精度を高めるためにも重要な要素となるのです。
以上のように、熱帯低気圧と温帯低気圧は発生場所、伴う前線、構成される空気の性質という三つのポイントでその違いをはっきりと区分けすることができます。
熱帯低気圧と台風の違いを解説
台風は主に北西太平洋や南シナ海で発生し、最大風速が約17m/s（34ノット）を超える強風を伴う気象現象として知られています。
熱帯低気圧と台風の一番の違いは、この風速にあります。
熱帯低気圧は最大風速が17m/sに満たない場合も多いですが、それでも激しい雨と風をもたらすため、近づく際にはしっかりとした準備と警戒が求められます。
さらに興味深いのは、台風が発生する地域によって呼び名が異なるという事実です。
太平洋西部では「タイフーン」、カリブ海では「ハリケーン」、インド洋や南太平洋の西部では「サイクロン」といった名称で呼ばれています。
まとめ
熱帯低気圧と温帯低気圧や台風との相違点についてご説明しました。
熱帯地方で温かい空気が集まることによって形成される熱帯低気圧は、風速が強まると「台風」として認識され、北へと進行します。
さらに、中緯度地域に達すると冷たい空気と混ざり合い、台風としての力を失いつつ温帯低気圧へと変わっていきます。
